
「プロの農家はどんなことをやっているのだろうか?」「農家で働くってどんな感じなのだろうか?」
こんなことを考えたことはありませんか?
農業といっても、農家によって規模の大小もあれば品目や栽培方法も多岐にわたるため、ひとくくりにはできないでしょう。
わたし自身は現在、工業系の会社員として毎日を過ごす傍ら、週末に「ねぎ」をメインに栽培されている農業法人のもとでアルバイトをしたり、個人農家さんのもとで農業研修を受けたりしています。
農業法人さんのほうでは、ねぎの収穫から出荷までの作業を担当するケースが多いのですが、その中で感じたことを取り上げます。
農業に興味のある方や、ねぎ栽培に興味のある方、大規模農家で働くことに興味のある方はご高覧ください。
花粉の量が桁違い

わたし自身は、もともと花粉症(スギ&ヒノキアレルギー)を発症しているのですが、春先の農作業は地獄でした。
収穫時はくしゃみと鼻水がとまらず、鼻をかむ余裕もないため、鼻水は当然垂れ流し状態。
くしゃみのし過ぎで気管が痛くなることもあれば、鼻づまりで夜も眠れないこともありました。
農作業に関わることがなかった時は毎年薬で誤魔化していましたが、農業をはじめてからは、そんなレベルでは到底農作業をやっていけないと感じたため、本年より根本改革に着手しました。
根本改善策として「舌下免疫療法」を選択

改善方法は「舌下免疫療法」という治療。
- 舌下免疫療法
- 耳鼻科で処方してもらう「シダキュア」という薬を舌の裏に置き、薬が溶けるまで待つ。(所要時間でいうと1分程度)
3~5年ほど毎日続けると、花粉症の症状が無くなるという治療方法。
症状の改善確率は8割程度とのことで、必ずしも治るとは限りません。
しかし副作用のあるステロイドなどの有害物質は入っておらず、身体に悪影響が及ぶものでもないことから治療に踏み切りました。
少々面倒臭いのは、月に1回は通院しないといけないこと。(病院側が薬を処方できる量が30日分と決まっているため)
効果は早ければ1年後くらいから実感できるそうで、今後を楽しみにしています。
「カフンコワイ」「ティッシュ」と壊れたロボットのように呟いていた自分とサヨナラできるか。
その後の状態は、今後も発信していこうと考えています。

農業をするなら花粉症対策は必須と言えるでしょう。
周囲の先輩たちは車の運転がみんな上手
農家といえば「トラック」ですよね。
わたしの勤める農家さんでも、軽トラ2台・トラック7台を所有しており、基本的に移動はトラックを使用します。
圃場へ収穫に行く際は、コンテナをたくさん積めるトラックを使用するのですが、圃場の中には極端に道が狭い場所もあります。(畑や田んぼは収穫量を増やしたいため、道の面積は最少にされているケースが多いのです)
そんな狭い道でも、意にも介さずハンドルをくるくると回し、目的の圃場に到着し収穫を始める先輩を目の当たりにしたときは、同じ人間には感じませんでした。
中には、車が入れないよう道の前に2本の柱が立てられていたにも関わらず、その柱をスルスルとかわしながら(両サイド5センチくらいの隙間しかない)目的地に到着されている方もいました。(やったらあかんけど凄いw)
わたし自身はAT限定の免許ではないため、先輩たちからも「おーい、トラックそこにつけといてくれ」や「おーい、トラックそこに入れといてくれ」などと注文を受けトラックに乗るケースもあります。
しかし先輩たちのように涼しい顔で運転することは不可能。(バックも全然見えません)
- いつ脱輪するか
- いつハウスにぶつけてしまうか
- いつ人を轢いてしまうか(いや轢くなw)
そんな恐怖と戦いながら日々を送っています。

狭い道をスルスルと走行できる方なら、農業に向いていると思います。
専用設備が充実しており、いずれも高額投資

農家といえば「機械」ですよね。
トラクターや管理機などは、多くの方がご存知だと思いますが、品目を限定して栽培されている農家さんは「専用設備」を持っておられるケースが多いです。
基本的に農作物の値段はインフレしにくい状況にあるため、農家として儲かるためには
- コストを下げる
- 収量を増やす
- 省力化する
- 効率を上げる
といったことが重要になるでしょう。
つまり、専用設備に投資する必要が出てくるということです。
収穫コンテナ運搬機
わたしの勤めるねぎ農家さんでは、ねぎを収穫するときにコンテナを30個ほど積める機械があります。
燃料駆動で、収穫ポイントまで機械を移動させ、収穫コンテナを積んでトラックが停めてある近くまで運びます。
機械が入らず、手押し車で移動させた時もありましたが、重くて2人がかりで押していました。
その時にあらためて機械のありがたさに気付くことができました。
ねぎ剥き機
また収穫後にねぎの不要な部分を剥いていくのですが、その作業を簡易にする機械もあります。
ベルトが低速でまわっており、ねぎをセットすると移動しながら水やエアーに当ててくれるため、ねぎが剝きやすくなる機械です。
剥きやすくなったねぎを後部で待ち構えているライン作業者(約5人)がねぎを剥いていくのですが、この機械があるおかげで作業ペースは約5倍。
このねぎ農家さんは、1日あたりのねぎ出荷量が500kg~1tほどあるため、手で剥いていては日が暮れるどころか夜が明けてしまうでしょう。
「あると便利」ではなく、もはや「ないと困る」機械です。

お父さんに伺うと、その機械の値段は700万円くらいとのこと。(ひえぇ~)
修繕費も含めると4桁万円はかかることは想定しておいたほうが良さそうだなと感じた次第です。
屈強な男たちに恐怖を感じる

ねぎを収穫するときに、コンテナをトラックに積み込む作業があるのですが、大抵は2人作業で行います。
しかし時間がない場合や、人手が足りない場合は1人で積み込むこともあります。
1コンテナ20kgくらいのコンテナをひょいひょいとトラックに積み、中には2個(約40kg)ずつ持ち上げるツワモノもいました。
わたしがやや熱中症を発症している(頭が痛い)最中でも、何事もないかのように作業をテキパキと終わらせていく姿に圧倒されていたときもありました。
畑に張っているマルチを剥がして回収していく作業なども、剥がしたマルチを巻いていけばいくほど重くなっていき、前腕がミシミシと悲鳴を上げていきますが、先輩方はペースを落とすことなく巻いていきます。

太陽がギラギラと照り返す灼熱の中、汗はかきつつも涼しい顔でパワープレイをこなす屈強な男たちに恐怖を感じている次第です。
わたし自身は筋力に自信はありませんでしたが、体力についてはスポーツをやっていたこともあり、平均レベルはあるだろうと思っていました。
しかし、農家に混ざってしまえば「愚かな考え」だったと悔い改めています。
- 夏場は頭が痛く(いや熱中症やんw)
- 歩くのも苦痛になるくらい乳酸が溜まり
- 翌日になれば案の定、身体はバッキバキ
そんな小鹿のような状態で本業もこなすことになるため、「早めにタフかつ屈強な男にならねば」と改めて自分自身の身体づくりを考えるキッカケになっています。
あと先輩方は、いずれも作業がとても早いです。

スピード感についても、盗めるポイントはどんどん盗んでいってやろうと思いました。
販路に困っておらず供給不足を恐れている模様

個人農家では作ったはいいが、売り先に困っている状態の方も多いのではないでしょうか。
販路は手数料をたくさん取られてしまうJA(農協)に出すだけ、という方も多いでしょう。
しかし、わたしの勤める農家(農業法人)では、そんな悩みはありません。

取引先は20社ほどあり、基本的に年間契約を結んでいます。
契約数に栽培が追い付かないことを「負ける」と言うそうですが、まさしく負けるときもあるそうです。
供給不足になると契約違反。信頼も失うことになるでしょう。
信頼を失わないために、さまざまな施策が取られています。(次章で紹介)
特殊な業務委託が存在する

農家は農家同士、横のつながりが結構あり、仕事の依頼をするケースも散見されます。
例えば、わたしの勤める農家さんでは、年商4億以上もあることから「ねぎ」の出荷数量は相当なモノがあります。
年間契約しているケースが大半を占めるため、「つくり過ぎ」なくらい作っておくのが基本になりますが、どうしても栽培が上手くいかなくなるケースもあるそうです。
ねぎ栽培の外注化(収穫のみ弊社で実施)
そんなリスクを軽減させるために、少し離れた場所で農業をしている農家さんに「栽培管理」のみを業務委託として依頼していました。

栽培は依頼先の農家さんに任せて、収穫はこちら側で行うというモノです。
こうすることで自社生産ができなかった場合でも、取引先には迷惑をかけずに済むでしょう。
ちなみに、「少し離れた場所」でお願いするのは栽培環境を変えるため。
同じような場所で栽培を依頼すると「気候条件」や「栽培環境」が類似しており、自社での栽培が上手くいっていないときに業務委託先での栽培も上手くいかない可能性が高くなるからです。

自然を相手に仕事をするため、一極集中してはイケないということでしょう。
にんにくの「皮むき作業」のみ受け入れ
また他社で生産された「にんにく」の皮むき作業だけを、弊社に依頼されるケースもありました。
大量のにんにくを生産したはいいが、商品として出荷するには表面の皮を剥いておく必要があります。(見た目を整えるため)
作業としては地味ですが結構難しく、薄皮一枚だけを剥いでいくわけですが、たまに失敗して深く剥いてしまうこともありました。
実はこれだけで中身が見えて商品化できなくなります。(超繊細)
このように「部分的」に業務を依頼するケースや依頼されたりするケースがあるのも、農業の面白いところであると感じました。

手が回らないときに頼れる農家さんを作っておくことや、自らが頼られる存在になることもまた、農家の仕事と言えるでしょう。
まとめ

年商4億円というと、一般企業であれば大した金額感ではないでしょう。
しかし、農業で4億円を売り上げている農家は間違いなく「大規模農家」です。
そんな大規模農家がおこなっている農業を体験して感じたことは以下です。
- みんな手(作業)が早い
- みんなトラックの運転が上手い
- みんな屈強で体力モンスター
- 専用(高額)設備が整っている
- 販路には困っていなさそう
- 仲間が多い(業務委託先が豊富)
- 花粉が怖い(大規模は関係ありませんがw)

基本的には、販路に困っている様子はなく、お客様のもとに商品を供給することを第一に考えられていました。
スタッフの作業が早く、業務委託を使っているのもこういった背景からでしょう。
以上を踏まえて、農業をするうえで「やるべきこと」や「意識すべきこと」としては以下です。
- まず身体づくり(筋力アップや花粉対策など)
- トラック運転スキルの向上
- 作業効率の向上(手順の最適化など)
- 生産性を高める設備への投資(個人で経営するなら)
- 作り過ぎなくらい作る意識
- 農家仲間(業務委託先)を増やす
「自給自足」という言葉に憧れて農業に挑戦する若者が多い印象を受けますが、個人的には農業ほど周囲の力を必要とする仕事はないと考えています。
販路先からしっかり取引していただくのも、業務委託先に協力していただくのも結局のところは「信頼」が必要になってくるでしょう。

わたし自身も「身体づくり」と「信頼構築」この2つは特に意識しながら活動していきたいと感じました。
農業に興味のある方や、これから農業に携わる方はぜひ一緒にがんばりましょう。