この記事は、15年働いた企業を退職し就農することを決めた1人の会社員が、滋賀県の”草津市”にて「葉物野菜」を栽培する農業法人から「農業研修」を受けた一部始終と所感を書き下ろした記事です。
わたし自身はこれまでの生活において、農家に対する「ツテ」もなければ、まともな「農業経験」もありません。
そんな「農業ど素人」が農家さんから、情報やノウハウを得るべく体験させていただいた内容をフル公開しました。

滋賀県で農業をしたい方や、滋賀県の農家情報が気になる方にとっては、貴重な情報源となるでしょう。
以下のような方は、ご高覧ください↓↓
- 滋賀県草津市で農業をしてみたい方
- 滋賀県草津市の農産物に興味のある方
- 他所の農家の実情が知りたい農家の方
- ど素人が農業に触れる様子を知りたい方
- 農業研修がどんなモノなのか知りたい方

滋賀県と言うと牛肉やコメのイメージがあるかもしれませんが、「野菜」を栽培されている貴重な農家さんを直撃しました。
研修内容やいただいた情報、実際に働いて感じたことも紹介していますので、農家を志す方や体験をしてみたい方は参考にしてみてください。
草津市での農業体験に至った背景
わたし自身は現在、京都市に在住しており、滋賀県には縁もゆかりもありません。
すでにお世話になっている研修先農家さんも3件ありますが、2件は京都の農家さんです。
滋賀県での研修を希望した理由は、妻の実家(三重県)への移動時間が短縮できるからです。
妻は出産を希望していることもあって、当初は実家が近い三重県内で研修を受けることが候補に挙がっていました。
しかし妻は現在京都で働いており、仕事のキャリアも大事にしたいそうで、
- わたしが自宅から研修先へ通える範囲
- かつ妻の実家が近くなる地域
という兼ね合いで、「滋賀県草津市」が浮かび上がってきました。

まだテスト段階ですが、草津という地域や研修先を知りたかったのが、研修を希望した主な理由です。

京都から妻の実家(三重)へ帰るには車で2時間半~3時間くらいかかりますが、草津からであれば1時間20分ほどで帰ることができます。
「本当は三重県で研修を受けた(就農した)ほうが良いだろう」という思いがありますが、さすがに往復5~6時間かかる研修先へ行くのはわたしの身体が持たないという判断に至りました。
ちなみに今回の研修先は、草津市役所の農林水産課から案内いただきました。
案内に至るまでの一部始終は以下の記事に格納しております↓↓
今回お世話になった農業法人は「横江ファーム」

今回お世話になったのは、「横江ファーム」という草津市北山田町に位置する法人農家さん。
社長は「横江秀美(よこえひでみ)さん」という面倒見の良さそうな女性の方でした。

5年ほど前に、当時の社長であったお父さんから代表取締役を継承したそうです。
草津市役所からは「草津農家の代表格」として紹介されるくらい影響力のある農家さんで、公式ページなどの広報活動を含めたアンテナが張り巡らされているのが印象的でした。
横江ファームの農業スタイル

横江ファームの農業スタイルは以下です。
- 横江ファームの農業スタイル
- ・従業員数は約50名の大規模経営
・栽培品目は小松菜をメインに葉物野菜を展開
・ITを活用した先進農業に転換中
・6次産業化も進めるなど活動範囲が広い
・福利厚生が充実

詳細に仕組みが整えられており、ある意味「農業」ではなく、「工場」といった雰囲気が漂う先進的な農家さんでした。
従業員数は約50名の大規模経営
正社員は10名程度、パートさんは教育実習生を含めて40名程度を抱えるなど、「まさに法人」といった規模で運営されています。
年齢につきましては、定年退職後に来られている高齢のパートさんもいれば、正社員の方の中には20代も多くおられるなど、幅広い層がMIXされていました。

圃場規模はハウス120棟を含む約9haを管理されており、この人数を抱える理由がわかる規模です。
作業者についても、「収穫係」「出荷調整係」「圃場管理係」と分業されているなど、しっかり仕組みが整えられています。
栽培品目は小松菜をメインに葉物野菜を展開
栽培品目に関しては、小松菜を中心に葉物野菜を栽培されています。
- 横江ファームの主な栽培品目
- ・小松菜
・水菜
・山東菜(白菜菜)
・ほうれん草

メインは8~9割が小松菜で占めてられており、専業での効率化を意識されている様子が窺えました。
以前はいろいろやっていたが、品目を絞って設備投資をしやすくしたとのことです。
ITを活用した先進農業に転換中
横江ファームでは「管理」と「効率」を徹底されていました。
事務所には大きなスクリーンが準備されており、各圃場の状況や天気、積算温度などが一目でわかるようにされていたのが印象に残っています。

従業員の中には、ITに強い金融業界出身の方もおられました。
「これまで融資を行ってきたが、お金を貸すことより直接的な形で中小企業に貢献したい。そのほうがもっと役に立てるから。」と転職されてきたそうです。(なんとまぁすごい理念)
他にも若い人材が豊富で、組織としてITを利用できる土壌作りにも意識が傾けられている印象を受けました。
6次産業化も進めるなど活動範囲が広い

横江ファームでは「かける小松菜」や「小松菜ペースト」という加工品も展開されています。
製品製作は加工業者に委託されているそうですが、しっかりと6次産業化にも余念がありません。
社長は「手間やコストのことも考えると、利益は出てないけどね」ともおっしゃっていましたが、品目を絞りつつ守備範囲を広げる方法を模索されているのでしょう。

加工品販売による「広報効果」を期待されているのかもしれませんね。学ぶべき点が無数にありました。
福利厚生が充実
農家の一般的なイメージは「3K」と言われていますが、そのイメージを覆すほど同社は洗練されていました。
- 3Kとは
- 「臭い」「キツイ」「汚い」といったネガティブな要素の頭文字の子音をとった造語。
ある意味「農家っぽくない」と感じた具体例は以下です。
- 建屋内が果てしなくキレイ(フローリングや畳部屋がある)
- 設備が充実(トイレは3箇所、シャワー室までも完備)
- 労働者に対する昼食出前サービス(希望者に弁当が届けられる)
- 味噌汁やウォーターサーバーも常備

他にも、雇用される場合なら、「バースデー手当」や「住宅手当」なども完備されているそうです。
代表取締役が女性ということもあって、繊細な配慮がされており、若い人材を確保できているのも納得できる福利厚生でした。
横江ファームで体験させていただいた作業
- 体験させていただいた作業
- ・小松菜の収穫
・播種後のネットかけ
・ハウス内清掃と下準備
・小松菜の出荷調整
・畔への防草シート張り

基本的には収穫をメインに、合間でその他の作業を体験させていただきました。
小松菜の収穫

作業の大半(8~9割)くらいは、小松菜の収穫作業にあたっています。
チーム(5~6人くらい)ごとに分かれて圃場に出向き、カマで土の中にある根っこ部分を切って収穫していきます。

慣れた作業者であれば、3株くらいを一気に刈り落として収穫されていました。
うち1人は、軽トラを利用して、他の4~5名が収穫したコンテナを会社へ運ぶ係として往復を繰り返されます。
作業者については、外国人の教育実習生もいれば定年退職された年配の方もおられるなど、様々な方がおられました。
ハウス内清掃と下準備
ハウスで栽培された野菜を収穫したあとは、ハウス内の雑草を引く必要があります。

ある程度は除草剤で枯らしますが、大きいモノや除草剤が効いていないところ手動作業が必要になるそうです。
抜いた草は、その場に放置していく農家が多い中、同社では袋に入れて持ち帰っておられました。
「雑草の種すらその場に残さないぞ」という拘りでしょうか。
こういった徹底ぶりが、高品質な作物の土台になるのでしょう。
また、ハウスの出入り口付近の「土」を、ハウス内の中央に移動する作業もさせていただきました。
スコップで掘っては、一輪車に積んで移動するという反復作業です。


トラクターが捌けない部分(端)の土は手作業でするしかないからですが、慣れないわたしは案の定全身筋肉痛を起こしました。
播種(種まき)後のネットかけ

この作業を行ったのは10月。つまり台風の季節です。
小松菜の植え付け深さは1cm程度と浅いため、蒔いた種が風で飛んでしまわないようにされていました。

ネットの張り方にも細かいノウハウがあり、貴重な体験をさせていただいたと感じています。

写真のように、畝から畝へと繋ぐ部分はグルグル巻きにして止めるなど、丁寧に教えていただきました。
割と力を使う作業だったため、翌日はもちろん足も腕も筋肉痛をおこすことに。
小松菜の出荷調整
収穫した小松菜は、そのままでは出荷できません。
- 外葉を除去して
- 規格のグラム数にまとめ
- 袋詰めする
といった工程を、10~15名くらいの作業者で管理されていました。

熟練者の作業は目にも止まらぬ速さで、小松菜を商品化されます。
外葉の切り落とし方や、土の落とし方などにも「コツ」があり、このあたりが自動化しにくい部分であることを体感しました。
防草シート張り

同社は、周囲の離農される農家さんから「農地」を譲り受ける機会が多いそうです。
その新規で取得した農地の「畔(あぜ)」に防草シートを張る作業をさせていただきました。
作業内容としては防草シートを張りながらピンを打ち付けていくだけですが、案の定こちらも翌日はハンマーを持っていた右腕前腕が大破しておりました。(←大袈裟w)
横江ファームを通じて感じたこと

横江ファームで感じたことはたくさんありますが、絞ってお伝えすると以下です。
- 従業員が若く、アップデートしやすい環境
- ルールが構築されており管理が行き届いている
- インフラが整えられており作業性が良い
- 経済が循環している
- 小松菜の収穫がとにかく大変

売上規模は「億」を超え、従業員数も50名ほどおられるだけあって、整備が行き届いた環境をお持ちだという印象を受けました。
従業員が若くアップデートしやすい環境
前述しましたが、同社はバラエティに富んだ人材を確保されています。
20代や30代の従業員もたくさんおられました。
- 異業種から転職されてきた方
- 農業高校を卒業された方
- 新規就農を目指して修業に来られている方
など、人材は多種多様。

若年層が活躍されていることもあって、様々なITツールや器具が活用されています。
ITツールで「圃場管理」や「タスク整理」、天気や温度などの「環境把握」といったところも、手がかからない工夫がされていました。
社長自身もわたしに対して「『もっとこうすれば良いのに』といったことがあれば言ってね」とおっしゃっていたように、次の時代を見据えた活動に重点を置かれているように感じました。

また外国人の教育実習生も多く、流暢な日本語を話されていたことも印象に残っています。
アップデートの土台が人に由来することを、身をもって感じました。
ルールが構築されており管理が行き届いている

法人化されておりかつ多様な人材を確保されているだけあって、マニュアルやルールはしっかり構築されていました。
- 誰が収穫したのか管理できるよう、コンテナに差し込むカード(担当者を色分けしたモノ)を準備されていたり
- 備品喪失を防ぐために、カマの「持ち出し」と「返却」を記録されていたり
- 班ごとの作業内容が詳細に記された指示書されていたり
- 朝礼で作業指示書の意図を説明されたあとに、班長から「復唱」をもとめたり
- 圃場ごとの収穫にかかった時間を記録できるようにしていたり
と、「後戻りロス削減」や「効率化」につながるような工夫が随所に見られました。

作業範囲の広い農業において、ここまで徹底されている事業体は稀であり、大変良い勉強になりました。
また同社は「グローバルギャップ認証」という認定を受けられている農家のため、「立ちションはNG」などの規制も設けられています。
この細やかなルールやマニュアルこそが、利益の出しにくい農業において、同社がしっかり利益を出し続けている理由なのだと感じました。
インフラが整えられており作業性が良い

多くの農家が「場所」「水」「設備」などに困っているなか、同社はしっかりとしたインフラが整えられていました。
上述しましたトイレが3箇所あったり、シャワー室が完備されていたりすることもしかり、根本の「作業のしやすさ」を意識されているのでしょう。
以下は、その快適なインフラの一例です↓↓
- 至るところに水道が通っている
- 基本的に農業は泥だらけになるため、サクッと洗える場所が有るのと無いのとでは大きな差が生じます。
わたし自身も帰る前に長靴を洗えるのが非常にありがたかったです。 - 残渣処理機
- 小松菜の切り落とした外葉を砕く機械です。(※上記の写真参照)
砕いた外葉を畑にすき込んで土に栄養補給をするわけですが、砕いていない葉を畑に戻すより分解するスピードが早く、次の作付けに移行しやすくなります。(※手作業でやるより早く精緻に砕けます) - 社用車が複数台完備
- わたしの確認した限り、軽トラ3台、軽バン3台、トラック2台が準備されています。
特に軽バンには、収穫時に使う道具が準備されており、積み下ろしロスを考えられた設計がされていました。 - 調整台とコンベヤー
- 小松菜の調整時に利用する作業台と、調整後にまとめやすくするためのコンベヤーが設置されています。
計量や包装係に流しやすいラインが構築されていました。 - 大型冷蔵設備
- 出荷前の野菜を保管しておく建屋型冷蔵庫です。
これがあるから大量に調整した小松菜を傷めず保管することができます。
同社ではパレットごと運べる間口の広い設備を3箇所設置されていました。

いずれもお金のかかる内容ですが、効率の良い農家さんがどのようなモノを利用しているのかを生で見ることができ、大変勉強になりました。
経済が循環している
前述したように同社は「かける小松菜」など、6次産業化もされています。
こちらは外注業者に「委託」されていますが、社長は「手間やコストのことも考えると、利益は出てないけどね」とおっしゃっていました。

広報活動の一環という理由もありそうですが、材料と加工賃を提供して資金が循環する経済圏を作られているのでしょう。
どうしても手元資金が薄くなり、出ガネを抑制しがちな業界において、「しっかり投資する」「循環させる」といった考えを垣間見ることができ、大変勉強になりました。
小松菜の収穫がとにかく大変
小松菜の収穫は平時であれば7:00~15:00まで行います。

これはわたしの体感ですが、左の首が崩壊しました。
というのも小松菜は左手で株を左方向に倒しながら、カマを持つ右方向から覗き込み刈り取るため、左肩首にストレスがかかります。
慣れてしまえば問題はないのでしょうが、慣れていない間は身体のケアは入念にしておきたいところです。
また収穫物自体は軽量作物のため、持ち運びに筋的負荷は大してかかりませんが、土が硬いときに長時間収穫を行った日はカマを持つ右手が左肩首同様、大破しました。
ゴロゴロとした土はもはや岩そのもので、カマの刃がなかなか入らず、収穫なのにまるで瓦割りをしているような気分でした。(←大袈裟w)

あらためて、農業は身体づくりが大事であることを理解できました。
まとめ

わたしが「横江ファーム」で研修を受けようと思った理由は、「大規模経営されている方の考えを知りたい」という思いからでしたが、作業現場を見れば「何を大切にしているのか」が一目瞭然でした。
- 大人数でも作業者自身が管理がしやすい「仕組み」を整えられていたこと
- 設備や建物、制度など、働きやすい「環境」を作ることに余念がないこと
- 次の時代を見据えた「ヒト」の受け入れ態勢を作られていたこと

従業員の方からもいろいろなお話を伺うことができ、同社の在り方が見えた気がします。
これから個人農家をはじめようとしているわたしにとって、同社の規模感は、遠くかけ離れた存在かもしれません。
しかし、大資本を要さなくてもできる「仕組みづくり」や「考え方」などは貪欲に取り入れていきたいと感じました。
やはり農業は一括りにはできないものですね。

いろいろな工夫や仕組みがあり、やり方は無数にあることを身をもって感じました。
ご縁や学びをいただいたことに、ただただ感謝いたします。
ちなみに、小松菜を一日中収穫してから2ヶ月間は、左首に違和感が残りました。
恐るべし、小松菜…(一刻も早く身体も鍛えないとw)
引き続きがんばります。
横江ファームは「研修生」も「従業員」も募集されています。

正社員やパートタイマーとして働く内容もあれば、これから独立就農される方への支援も行っていただける内容もあります。
整った仕組みや環境下で土に触れたい方は、お問い合わせしてみてください。